ギリシャ神話の地図
デメテル身を寄せた女神ペルセポネ奪われた娘ハデス奪った王ゼウス折れた王

エレウシス

Ἐλευσίς場所

見た者は幸いである。見なかった者は、死んだあとに同じ幸せを受けることはない。古代ギリシャの人々がそう信じ、けれど中身は決して口外してはならなかった儀式がある。エレウシスの秘儀である。その始まりを語るのが、『ホメロス風讃歌』の中の「デメテル讃歌」だ。

エレウシスは、アテネの西にあった町。娘を奪われた実りの女神デメテルが、身を寄せた町である。

冥界の王ハデスが、ゼウスの許しを得て、デメテルの娘ペルセポネをさらっていった。デメテルは松明を手に、夜も昼も地上をくまなく探し回る。やがて事情を知った女神は、神々に腹を立てて天を去り、年老いた人間の女の姿で、エレウシスへやって来た。神話集を書いたアポロドーロスによれば、女神がまず腰を下ろした岩は、のちに「笑わない岩」と呼ばれたという。

女神はこの町の王の館に迎えられた。悲しみに沈んで口もきかず笑いもしない女神を、侍女が冗談を言って、ようやく笑わせた。女神は王妃の赤子の乳母になり、その子を不死の者にしようと、夜ごとひそかに火の中に置いた。ところが母親に見つかって叫ばれ、女神は正体を明かす。そして人々に、大きな神殿と祭壇を建てるよう命じ、自分の儀式をみずから教えると告げた。

神殿ができあがると、デメテルはそこにこもり、ほかの神々から離れて、娘を思って嘆き続けた。女神が種を土の中に隠してしまったので、その年は畑に何も実らなかった。人間は飢えに苦しみ、神々への供え物も途絶えそうになった。困ったゼウスはついに、娘を母のもとへ返すことにする。

地の底から母のもとへ帰ってくる娘。レイトンの絵(1891年)。
地の底から母のもとへ帰ってくる娘。レイトンの絵(1891年)。『ペルセポネの帰還』 フレデリック・レイトン 1891年Public domain

娘と再会した女神は、エレウシスの王たちに儀式の執り行い方を示し、秘儀を教えた。讃歌が伝えるのはそこまでで、秘儀の中身そのものは語られない。アポロドーロスによれば、女神は王妃の上の息子に、翼のある竜の引く車と小麦を与えた。息子は空を駆けて、人の住む世界じゅうに麦の種をまいたという。

この物語の出典: 作者不詳『ホメロス風讃歌』、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』

この物語の人々

ローマ以後の語り

ハデスがペルセポネをさらうと、デメテルは夜も昼も松明を持って地上を探し、事情を知ると神々に怒って天を去り、女の姿でエレウシスに来た。最初に座った岩は、女神にちなんで「笑わない岩」と呼ばれるようになり、「美しい踊りの井戸」のそばにあった。

アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃

デメテルは王妃メタネイラの上の子トリプトレモスに、翼のある竜の車と小麦を与え、彼は空を駆けて人の住む大地全体に種をまいた。パニュアッシスはトリプトレモスをエレウシスの子とし、ペレキュデスはオケアノスと大地の子とする。

アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃

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デメテルはエレウシスの王ケレオスの館に迎えられ、侍女の冗談でようやく笑った。王妃の子の乳母となり、夜ごと火に置いて不死にしようとしたが、見つかって中断され、正体を明かした。アポロドーロスでは、女たちがテスモポリアの祭りで冗談を言い合うのはこのためとされる。

作者不詳『ホメロス風讃歌』 前7〜6世紀頃、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃

正体を明かしたデメテルは、民に大きな神殿と祭壇を建てるよう命じ、自分の儀式をみずから教えると告げた。神殿が建つと女神はそこにこもって娘を思い嘆き、種を地中に隠したので、その年は何も実らず人間は飢えに苦しんだ。

作者不詳『ホメロス風讃歌』 前7〜6世紀頃

娘と再会したデメテルは、エレウシスの王たちに儀式の執り行い方を示して秘儀を教えた。讃歌は「これを見た地上の人は幸いである。秘儀にあずからない者は、死んだあと同じ幸いを受けない」と述べ、中身は明かさない。

作者不詳『ホメロス風讃歌』 前7〜6世紀頃

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このページの出典(2件)
  1. 前7〜6世紀頃作者不詳『ホメロス風讃歌』
  2. 1〜2世紀頃アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』