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アポロン愛した神オルペウス竪琴弾きニンフ鹿の主ヒュアキントス恋人仲間ガニュメデス歌の続き
アポロンとキュパリッソス。足もとに鹿。クロード=マリー・デュビュフの作。

キュパリッソス

Κυπάρισσος人間

アポロンとキュパリッソス。足もとに鹿。クロード=マリー・デュビュフの作。 『アポロンとキュパリッソス』 クロード=マリー・デュビュフ 1821年 カルヴェ美術館(アヴィニョン)Public domain

糸杉は、古くから喪の木とされてきた。枝は葬儀に使われ、死者を悼むしるしとなった。英語でサイプレスと呼ばれるこの木の名は、ギリシャ語の「キュパリッソス」にさかのぼる。そしてキュパリッソスは、アポロンに愛された一人の少年の名前でもあった。

では、糸杉になった少年キュパリッソスの物語を、ローマの詩人オウィディウスの語りでたどってみよう。

この話は、竪琴の名手オルペウスが妻を失って嘆く場面の中に置かれている。オルペウスが丘の上で竪琴を弾くと、それまで木陰ひとつなかった丘に、あちこちから木々が集まってきた。その最後にやって来たのが、競走路の折り返しの柱のようにすらりと伸びた糸杉だった。今は木だが、昔は竪琴と弓を操る神、アポロンに愛された少年だった。

ある島の野に、ニンフたちに捧げられた大きな鹿がいた。広く張った角が自分の頭に影を落とすほどの大鹿で、角は金色に輝き、首には宝石の首飾りがかかり、額には銀の飾りが揺れていた。この鹿は人を少しも怖がらず、家々をたずねては、見知らぬ人にも首をなでさせた。

中でもこの鹿を、いちばんかわいがったのが、島でいちばん美しい少年キュパリッソスだった。新しい草地や澄んだ泉へ連れていき、角に色とりどりの花を編み込み、背にまたがって紫の手綱であちこち駆け回った。

ある夏の真昼のことだ。暑さに疲れた鹿は、草の上に横たわり、木陰で涼んでいた。そこへ、キュパリッソスはそれと気づかずに、鋭い投げ槍を放ってしまった。槍は鹿を貫いた。むごい傷で死んでいく鹿を見て、少年は自分も死のうと決めた。

アポロンはあらゆる言葉で慰め、これほどのことで悲しみすぎないようにと言い聞かせた。けれども少年は嘆き続け、神々に最後の願いを一つだけ求めた。いつまでも、悲しみ続けさせてください。

果てしなく流れる涙で、少年の体から血が尽きた。手足は緑に変わり、雪のように白い額にかかっていた髪は、ごわごわした葉になった。体は硬く細く伸び、とがった梢で星空を見上げる姿になっていく。

アポロンは悲しげにため息をつき、木になった少年に言った。お前は私に悼まれ、ほかの者を悼み、嘆く人々のそばにいるだろう。こうして糸杉は、死者を悼む木になったという。

この物語の出典: オウィディウス『変身物語』、ダグラス・ハーパー『オンライン語源辞典』

この物語の人々

ローマ以後の語り

オウィディウスの形: ケオス島カルタイアの野のニンフたちに捧げられた大きな鹿がいて、人に慣れ、誰にでも首をなでさせた。ケオスの少年キュパリッソスはとりわけこの鹿をかわいがり、角に花を編み、背にまたがって遊んだ。夏の真昼、木陰で休んでいた鹿を、少年はそれと気づかずに投げ槍で射てしまう。死にゆく鹿を見て自分も死のうと決め、アポロンがいくら慰めても、永遠に悲しませてほしいとだけ願った。涙で血の気を失った体は緑に変わり、髪は逆立って細い梢となり、空を見上げる木になった。

オウィディウス『変身物語』 8年頃

変わった木を見て、アポロンは「お前は私に悼まれ、他の者を悼み、嘆く人々のそばにいるだろう」と告げる。糸杉が喪の木、墓地の木とされることの由来譚になっている。英語の辞書も、糸杉の枝が葬儀に使われ、死者を悼むしるしとされたことを記している。

オウィディウス『変身物語』 8年頃、ダグラス・ハーパー『オンライン語源辞典』 2001年〜(2026年9月閲覧)

この話は、妻を失ったオルペウスが竪琴を弾くと、陰のなかった丘に木々が集まってきた、という場面の中に置かれている。集まった木々の最後に、競走路の折り返し柱のような形の糸杉が来て、「今は木だが、もとはアポロンに愛された少年だった」と話がさかのぼる。語り手はオルペウスではなく詩人自身で、このあとオルペウスがガニュメデスやヒュアキントスの歌を始める。

オウィディウス『変身物語』 8年頃

キュパリッソスの鹿は、金に輝く角と宝石の首飾り、額の銀の飾りをつけ、人を恐れず家々を訪れて見知らぬ人にも首をなでさせた。少年はこの鹿を草地や泉へ連れていき、角に花を編み、紫の手綱で背に乗って駆けた。

オウィディウス『変身物語』 8年頃

もっと詳しく

キュパリッソスの変身をまとまった物語として伝える現存の資料は、オウィディウスが最も古いとされる。後代の注釈家には、少年を愛したのをアポロンではなく森の神シルウァヌスや西風ゼピュロスとする説も伝わる。

今の言葉に残る

サイプレス(糸杉) / cypress英語 cypress は古フランス語 cipres、ラテン語 cupressus を経て、ギリシャ語 kyparissos に行き着く。ギリシャ語自体は、ギリシャ語以前の地中海の言葉から来たと考えられている。英語での初出は12世紀後半。枝が葬儀に使われ、死者を悼むしるしとされた木で、オウィディウスはその由来をアポロンに愛された少年キュパリッソスの変身として語る。

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このページの出典(2件)
  1. 8年頃オウィディウス『変身物語』
  2. 2001年〜(2026年9月閲覧)ダグラス・ハーパー『オンライン語源辞典』