出典 · ローマ期
ホメロス後日譚(ポストホメリカ)
クイントゥス・スミュルナイオス · 3〜4世紀 · Posthomerica
『イリアス』の後から落城までを叙事詩環に基づいて再話。
日本語訳: 北見紀子訳『ホメロス後日譚』京都大学学術出版会(西洋古典叢書 G106)、2018 / 松田治訳『トロイア戦記』講談社学術文庫、2000
この出典が語っていること
アポロン
- アキレウスの死は『イリアス』には描かれない。死に際のヘクトルが「パリスとポイボス・アポロンがお前をスカイア門で殺すだろう」と予言するのみで、実際の場面は失われた叙事詩『アイティオピス』や後代の作品で語られる。 (『イリアス』22.358-360(予言)。『アイティオピス』はプロクロスの梗概でアポロンとパリスによる殺害を伝える。クイントゥス 3.30-185)
カルカス
- 役割は後代の伝承ほど増える。アポロドーロスの摘要では、ヘラクレスの弓が無ければ城は落ちないと告げてピロクテテスを呼び戻させ、ヘレノスが城を守る神託を知っていると言い当てる。木馬を思いつくのは摘要ではオデュッセウスだが、クイントゥスでは「もう力攻めはやめて計略に移れ」と最初に進言するのがカルカスになる。 (摘要 5.8(ヘラクレスの弓)、5.9(ヘレノスが神託を知ると告げる)。ネオプトレモスを呼ぶ条件を告げるのはヘレノス自身(摘要 5.10)/ クイントゥス『トロイア戦記』12.1-20)
グラウコス
- 『イリアス』の外では、アキレウスの遺体を巡る戦いで大アイアスに討たれたとされる。遺体はアポロンが風に運ばせてリュキアへ帰したと語られる。 (アポロドーロス摘要 5.4。遺体をリュキアへ運ぶ話はクイントゥス『ホメロス後日譚』による)
メムノン
- 関係: killed_by → achilles (『アイティオピス』要約、クイントゥス『ホメロス後日譚』2)
オイノネ
- ピロクテテスの矢に倒れたパリスがイダ山へ運ばれて助けを乞うが拒む。パリスの死を知って悔い、自ら命を絶つ(火葬の薪に身を投げる)。 (アポロドーロス 3.12.6、クイントゥス『ホメロス後日譚』10.259-489)
パリス
- ピロクテテスの矢で傷を負い、かつて捨てた妻オイノネに治療を乞うが拒まれて死ぬ。悔いたオイノネは後を追う。 (アポロドーロス 3.12.6、クイントゥス『ホメロス後日譚』10)
ペンテシレイア
- 「兜を剥いだ瞬間に恋に落ちた」という形で描くのは後代。クイントゥスでは、倒れた女王の美しさにアキレウス自身が痛みを覚え、ギリシャ勢が遺体に見入る場面として詳述される。 (クイントゥス 1.650-674 あたり(アキレウスが倒れた女王の美しさに心を痛める)。テルシテスの嘲りと殺害は 1.716-781)
- アポロドーロスでは、ペンテシレイアは誤ってヒッポリュテを殺し、プリアモスに清められた。戦場ではマカオンをはじめ多くを倒した。クイントゥスでも、姉妹殺しの穢れを清めるためにトロイアへ来たとされ、12人のアマゾンが従う。 (アポロドーロス摘要5.1。クイントゥス第1巻冒頭(Way訳で22-72行、ギリシャ語本文の行番号は未確認))
- クイントゥスでは、アキレウスの槍が女王の胸を貫き、さらに乗っていた馬まで串刺しにする。 (第1巻(Way訳で807-851行、ギリシャ語本文の行番号は未確認))
- 遺体はトロイア方に返され、火葬された骨はラオメドンの墓のそばに葬られた。 (第1巻末尾(Way訳で1062-1094行、ギリシャ語本文の行番号は未確認))
- 関係: killed_by → achilles (『アイティオピス』要約、クイントゥス『ホメロス後日譚』1)
- 関係: companion → priam (クイントゥス 1 でプリアモスに迎えられ、トロイアを救うと誓う)
シノン
- スミュルナのコイントスでは、シノンは自分から志願して残る。トロイア人は本当のことを言わせようと耳と鼻を削ぎ、火で責めるが、ヘラに忍耐を吹き込まれたシノンは同じ作り話を繰り返し続ける。 (12巻(志願と拷問)。行番号は未確認)
- 関係: participated_in → trojan-horse (『アエネイス』2.57-198(嘘の演説)、2.257-259(夜に木馬の閂を外す)。アポロドロス『摘要』5.15、5.19)
- 関係: companion → odysseus (12巻 オデュッセウスが残る役を募り、シノンが名乗り出る)
- 関係: enemy → laocoon (12巻 シノンを疑い、木馬を焼けと叫んだのがラオコオン)
トロイアの木馬
- 中に入った人数は出典によってまちまちで、アポロドーロスは50人とし、注釈は『小イリアス』が3000人、クイントゥスが30人の名を挙げ、ツェツェスは23人としていると伝える。『イリオスの陥落』の要約は「最も優れた者たち」と言うだけで数を挙げない。 (アポロドーロス摘要 5.14(50人。フレイザーの注に他説の一覧がある)、『イリオスの陥落』要約)