出典 · ローマ期
歌集(カルミナ)
ホラティウス · 前23年・前13年 · Odes (Carmina)
抒情詩集4巻。3.29.8 でトゥスクルムの丘を「父殺しテレゴノスの丘(Telegoni iuga parricidae)」と呼び、この町の創建をテレゴノスに帰すローマ側の伝承を前提にしている。
この出典が語っていること
クレイオ
- ホラティウスは「クレイオよ、竪琴か鋭い笛で、どんな人を、どんな英雄を、どんな神を称えようとするのか」と呼びかける。ここでのクレイオは、歴史というより、人や神を称える歌のムーサ。 (『歌章』1.12.1-3)
ダナイデス
- 冥界で穴の開いた器に水を汲み続ける罰は、アポロドーロスの神話本文には出てこない。ラテン文学では定番で、ホラティウスは「絶えず底から流れ出る水」と「冥界の罰」を歌い、オウィディウスも「失う水を繰り返し汲むベロスの孫娘たち」を、タンタロスやシシュポス、イクシオンと並べて冥界の罪人に数える。 (ホラティウス『歌章』3.11.21-32 / Met. 4.457-463、10.43-44 / アポロドーロス 2.1.4-5 には罰の記述がない。罰とダナイデスを結びつけた最古の資料は未確認)
- ホラティウスは、夫を助けたヒュペルムネストラを「見事な嘘つき(splendide mendax)」と呼び、父を欺いて夫を逃がした彼女の言葉を詠む。オウィディウス『名婦の書簡』にも、彼女が夫リュンケウスに宛てた手紙の形の詩がある。 (『歌章』3.11.33-52 /『名婦の書簡』14)
- ホラティウスでは、ヒュペルムネストラが夫に「起きて、父と姉妹を欺いて逃げて。父が私を鎖で縛っても遠い国へ流しても構わない。夜とウェヌスが味方するうちに行き、いつか私の墓に嘆きを刻んで」と告げる。詩人は彼女を「見事な嘘つき」で永遠に名高い乙女と呼ぶ。 (3.11.33-52)
- 関係: visited → underworld (水を運び続ける罰の場。ホラティウス『歌章』3.11.21-32 / Met. 4.462-463、10.43-44)
エウテルペ
- ホラティウスは『歌章』の最初の詩で、「エウテルペが笛を止めず、ポリュヒュムニアがレスボスの竪琴を張るのを拒まなければ」自分は抒情詩人の列に加われる、と書く。前1世紀のローマで、エウテルペは笛と結びつけられている。 (『歌章』1.1.32-36)
ギガントマキア
- ホラティウスは、テュポエウス、ミマス、ポルピュリオン、ロイトス、木を引き抜いて投げるエンケラドスも、アテナのアイギスの前には何もできなかったと歌い、「知恵のない力は自分の重さで崩れる」という教訓にする。 (『歌章』3.4.42-68)
ヘカトンケイル
- ローマの詩人は彼らを反対側に置く。ウェルギリウス『アエネイス』では、アイガイオンは百の腕と五十の口から火を吐き、五十の盾を打ち鳴らしてユピテルの雷に立ち向かった者のたとえに使われる。ホラティウスも「百の手のギュアス」を、知恵のない力が自滅する例として、神に逆らった巨人たちと並べる。 (『アエネイス』10.565-568。ホラティウス『歌章』3.4.65-72(2.17.14 にも「百の手のギュアス」))
メルポメネ
- ホラティウスはメルポメネを三度呼ぶが、どれも悲劇ではない。友の死を悼む歌では「父から澄んだ声と竪琴を授かった」ムーサとして挽歌を頼み、詩集の結びでは自分の頭にデルポイの月桂冠をかぶせてくれと頼み、別の歌では、生まれたときにメルポメネに目をかけられた者は詩人になると歌う。 (『歌章』1.24.1-4, 3.30.14-16, 4.3.1-12)
- ホラティウスは『歌章』第3巻を「青銅より長く残る記念碑を打ち立てた」と始まる歌で結び、最後にメルポメネに、デルポイの月桂樹を自分の髪に巻いてくれと頼む。 (3.30.1-16)
ポリュムニア
- ホラティウスは『歌章』の最初の詩で、「エウテルペが笛を止めず、ポリュヒュムニアがレスボスの竪琴を張るのを拒まなければ」自分は抒情詩人の列に入れる、と書く。ここでのポリュヒュムニアは、抒情詩を支える竪琴のムーサとして呼ばれている。 (『歌章』1.1.32-36)
- 関係: sibling → euterpe (『歌章』1.1.32-34 エウテルペ(笛)とポリュヒュムニア(竪琴)が一組で呼ばれる)
テレゴノス
- 異伝: ローマ側の伝承では、テレゴノスはイタリアのトゥスクルム(現フラスカーティ付近)の創建者とされる。ホラティウスはこの町の丘を「父殺しテレゴノスの丘」と呼ぶだけで説明を加えておらず、読者に通じる話だったことが分かる。イタリア諸都市をギリシャ英雄に結びつける系譜の一例。 (ホラティウス『歌集』3.29.8「Telegoni iuga parricidae」。本文で確認。オウィディウスにも言及があるとされるが箇所は未確認)
タレイア
- ホラティウスは、アポロンを「澄んだ声のタレイアに教える竪琴弾き」と呼ぶ。ここでのタレイアは喜劇ではなく、竪琴に合わせた歌のムーサ。 (『歌章』4.6.25-26)