出典 · ローマ期
変身物語(黄金のろば)
アプレイウス · 2世紀後半 · Metamorphoses (The Golden Ass)
ラテン語の小説。4.28-6.24 に挿話「クピドとプシュケ」があり、プシュケの物語はこれが最古のまとまった典拠。巻・章番号で参照する。
日本語訳: 呉茂一・国原吉之助訳『黄金の驢馬』岩波文庫 · 原文・参考リンク ↗
この出典が語っていること
アンブロシアとネクタル
- 神々の宴でネクタルを注ぐのはヘベで、ある場面ではヘパイストスが注いで回って神々の笑いを誘う。ガニュメデスはゼウスの酒注ぎとして天にさらわれた。アプレイウスでは、ネクタルは「神々のぶどう酒」と呼ばれ、ゼウスには田舎の少年(ガニュメデス)が、他の神々にはリベル(ディオニュソス)が注ぐ。 (『イリアス』4.1-4、1.595-600、20.231-235、アプレイウス6.24)
- アプレイウスの物語では、ユピテル(ゼウス)がプシュケにアンブロシアの杯を差し出し、「取れ、プシュケよ、そして不死となれ」と言って、クピドとの結婚を正式なものにする。 (6.23)
エロス
- アプレイウス『変身物語(黄金のろば)』の挿話では、クピドは母ウェヌスに命じられて美しすぎる娘プシュケに醜い男を恋させに行くが、自分が恋に落ちて彼女を妻にする。 (4.28-6.24(4.31 で母がプシュケを罰するよう命じる))
- 関係: spouse → psyche (6.23-24 ユピテルの前で正式に結ばれ、娘ウォルプタス(悦び)が生まれる)
パン
- 関係: companion → echo (『パン讃歌』(19)21 で山頂にエコーが響く。アプレイウス 5.25 ではパンがエコーを抱いて声の出し方を教えている)
- 関係: companion → psyche (5.25 川に身を投げて助かったプシュケを慰め、クピドの心を取り戻すよう諭す)
プシュケ
- プシュケとクピドの物語は、2世紀のアプレイウス『変身物語(黄金のろば)』の中で、老婆が囚われの娘に語る挿話として残る。ギリシャ語の古い叙事詩や悲劇には、この筋でプシュケが登場する作品は伝わっていない。 (4.28-6.24)
- プシュケの美しさに人々がウェヌスの神殿を空けて彼女を拝むようになり、怒ったウェヌスは息子クピドに、最も卑しい男に恋させよと命じる。父王がミレトスのアポロンの神託を伺うと、娘を花嫁衣装で岩山に置き、神々も恐れる怪物のような夫を待て、と告げられる。 (4.28-33)
- 西風に運ばれた宮殿で、夫は夜にだけ訪れ、姿を見ることを禁じる。姉たちに「夫は大蛇だ」と吹き込まれたプシュケは灯火と剃刀を持って寝顔を見るが、そこにいたのはクピドだった。灯火の油が一滴こぼれて肩を焼き、クピドは飛び去る。 (5.1-6, 5.19-23)
- ウェヌスはプシュケに、混ざった穀物のより分け(蟻が手伝う)、金の羊毛の採取、ステュクスの源の水汲み(鷲が手伝う)、冥界のプロセルピナから美の小箱をもらってくること、という難題を課す。 (6.10-21)
- 冥界から持ち帰った小箱(pyxis)を、プシュケは好奇心から開けてしまい、中から出た「ステュクスの眠り」に倒れる。クピドが眠りを箱に戻して彼女を起こす。 (6.19-21)
- ユピテルは神々の集会でクピドとプシュケの結婚を認め、プシュケにアンブロシアの杯を与えて不死にする。二人のあいだには娘ウォルプタス(悦び)が生まれる。 (6.23-24)
- 関係: spouse → eros (5.1-6(姿を見せない夫として通う), 6.23-24(正式な婚姻))
- 関係: punished_by → aphrodite (4.29-31 人々がプシュケを女神のように崇めたためウェヌスが嫉妬し、息子に罰を命じる。6.10-21 で難題を課す)
- 関係: received_gift → zeus (6.23 ユピテルが神酒アンブロシアの杯を与えて不死にする)
- 関係: visited → persephone (6.16-21 ウェヌスの命で冥界のプロセルピナのもとへ美の小箱を取りに行く)
- 関係: visited → styx (6.13-15 ステュクスの源の水を汲んでくるよう命じられ、ユピテルの鷲が代わりに汲む)
- 関係: companion → pan (5.25 夫を失って川に身を投げたプシュケを、エコーを抱いて川辺にいたパンが慰める)
ゼピュロス
- アプレイウスの「クピドとプシュケ」では、ゼピュロスはクピドの召し使い。岩山の頂に置かれて泣くプシュケをそっと持ち上げ、花の咲く谷の草の上に降ろす。クピドの命で姉たちも運ぶが、姉の一人は「ゼピュロスよ、女主人を受け止めよ」と叫んで岩から飛び降り、岩に打たれて死んだ。 (4.35、5.6-7、5.14、5.16、5.26-27)
- 関係: servant → eros (5.6「あなたの召し使いゼピュロス」、5.7、5.26)