「海のへそ(オンパロス・タラッセス)」にある島と呼ばれる。木の茂った島で、その中に女神が住むと紹介される。世界の中心でありながら最も孤絶した場所という逆説的な位置づけ。
ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃
Ὠγυγίη場所
2026年のクリストファー・ノーラン監督の映画『オデュッセイア』では、シャーリーズ・セロンが女神カリュプソを演じる。英雄オデュッセウスを7年ものあいだ手元に引き留めた女神だ。その女神が住んでいたのが、はるか海の果ての島、オギュギアである。
では、この島がどんな場所で、そこで何が起きたのか見ていこう。
『オデュッセイア』の物語は、実はこの島から始まる。故郷へ帰れないまま、オデュッセウスはここに引き留められていた。女神アテナは神々の集まりで、あの男は海のへそにある、木の茂った島で、女神に捕らわれているのです、と父ゼウスに訴えた。世界の真ん中にありながら、どこよりも遠く離れた島。神々でさえ、めったに立ち寄らない。
オデュッセウスがこの島に流れ着いたのは、帰り道の最後の難所を越えたあとだった。太陽神の牛を仲間たちが食べたために船は雷で砕かれ、生き残ったのは彼一人。9日間海を漂い、10日目の夜、この島に打ち上げられた。
ゼウスの命令を届けるため、使いの神ヘルメスが海を渡ってやって来た。洞窟の中では杉とネズの木が燃えて香りを放ち、女神は美しい声で歌いながら、黄金の道具を手に機を織っていた。洞窟のまわりにはハンノキやポプラや香りのよい糸杉が茂り、梟や鷹や海の鳥が巣をかけていた。入口には葡萄のつるが房を垂らし、四つの泉が並んで流れ、スミレとパセリの柔らかな草地が広がっていた。神であるヘルメスでさえ、立ち止まって見とれるほどだった。

けれど、オデュッセウスはそこにいなかった。いつものように浜の岩に座り、涙を流しながら、実りのない海を眺めていたのだ。夜は洞窟で、望まないまま女神の隣で眠った。

島には、船も漕ぎ手もなかった。人の住む土地からあまりに遠く、自分の力で抜け出すことはできない。女神が閉じ込めていたというより、島そのものが牢屋のようなものだった。
ゼウスの命令を聞いた女神は、神々は勝手だと抗議したが、結局は従った。オデュッセウスに斧と手斧を渡し、木の生えている場所を教え、帆にする布も与えた。オデュッセウスは4日で筏を組み上げ、5日目に島を離れた。7年を過ごしたこの島を出てから18日目、彼の目に、次の土地の山影が見えてきた。
この物語の出典: ホメロス『オデュッセイア』、クリストファー・ノーラン監督『映画『オデュッセイア』』
「海のへそ(オンパロス・タラッセス)」にある島と呼ばれる。木の茂った島で、その中に女神が住むと紹介される。世界の中心でありながら最も孤絶した場所という逆説的な位置づけ。
ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃
洞の周りにはハンノキ・ポプラ・糸杉が茂り、梟や鷹や海烏が巣をかけ、葡萄が蔓を張り、四つの泉が並んで流れ、菫とパセリの草地が広がる。ヘルメスでさえ立ち止まって見入ったと語られる。
ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃
物語の現在時制はこの島から始まる。1歌で神々がオデュッセウスの解放を決め、5歌でヘルメスが派遣される。9〜12歌の冒険はすべてこれ以前の回想である。
ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃
ヘリオスの牛の一件で船を失った後、9日間漂流して10日目の夜にこの島に流れ着いた。到着の経緯は9〜12歌の回想の最後に短く語られるだけで、7年間の中身は描かれない。
ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃
船も漕ぎ手もなく、人の住まいから遠く離れているため脱出できないと説明される。カリュプソが閉じ込めるというより、地理そのものが牢になっている。
ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃
筏は4日で仕上がり、5日目にカリュプソはオデュッセウスを島から送り出した。
ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃