出典 · ローマ期
博物誌
大プリニウス · 77年 · Naturalis Historia (Natural History)
全37巻の百科的著作。神話そのものより、ローマ期の人々が自然現象を神話でどう説明したかの証言として使える。
この出典が語っていること
アンタイオス
- プリニウスは、大西洋岸のリクソスについて、アンタイオスの宮殿があり、ヘラクレスとの戦いの場で、ヘスペリデスの園もここにあったと古い作家たちが語る、と記す。 (5.1(ボストック訳の章番号))
カストル
- ふたご座の二つの明るい星のうち、α星がカストル、β星がポルックス(ポリュデウケス)と呼ばれる。航海の守護は古く、『ホメロス讃歌』33 は嵐の海で船乗りが二人を呼ぶと、翼で翔け下りて風と波を鎮めると歌う。プリニウスは帆桁に灯る火を二つ見えれば吉、一つなら凶とし、二つのそれを「カストルとポルックス」と呼ぶと記す。のちの聖エルモの火にあたる。 (『ホメロス讃歌』33.6-17 / プリニウス『博物誌』2.101 / etymonline の Castor・Pollux の項(α星・β星の名))
クリュティエ
- オウィディウスは花の名を書いていない。太陽の動きに合わせて向きを変える草は、ギリシャ語で「太陽(ヘリオス)に向く(トレペイン)」を意味するヘリオトロピオンと呼ばれた。1世紀のプリニウスは、この草が曇りの日でも太陽とともに回り、「それほど星(太陽)を愛している」ので夜には恋しがるように青い花を閉じる、と書いている。プリニウスはクリュティエの名は出していない。 (プリニウス『博物誌』2.109、22.57 / etymonline の heliotrope の項。語源記事 etymologies/heliotrope も参照)
グリュプス
- プリニウスは、北方の一つ目の民アリマスポイが、鉱山から金を掘り出して守るグリュプスと絶えず争っているという話を、ヘロドトスとアリステアスを典拠に紹介する。一方、鳥の巻では、耳が長く曲がったくちばしのグリュプスを作り話の鳥に数え、金の巻でも「スキタイでグリュプスが掘る金」に触れている。 (7.2、10.70、33.21(いずれもボストック訳の章番号))
ラビュリントス
- 「ラビュリントス」は古代にはクレタだけの名ではなかった。ヘロドトスはエジプトのモエリス湖近くの巨大な建造物をラビュリントスと呼んで「言葉では言い表せない」と驚き、大プリニウスは、ダイダロスがこのエジプトのものを手本に、その百分の一だけを真似てクレタの迷宮を造ったと書いて、エジプト・クレタ・レムノス・イタリアの4つを挙げる。 (ヘロドトス 2.148、プリニウス『博物誌』36.84-85, 36.90)
メレアグロス
- 嘆く姉妹は鳥になった。オウィディウスでは、ゴルゲとデイアネイラを除く姉妹をアルテミスが鳥に変える。ヒュギヌスはその鳥を「メレアグリデス(ホロホロチョウ)」と呼ぶ。大プリニウスは、ボイオティアにいるメレアグリデスはアフリカ産の雌鶏の一種で、メレアグロスの墓がこの鳥を有名にしたと書き、ソポクレスが琥珀を「メレアグロスを悼む鳥の涙からできる」と詠んだことを、あり得ない話として批判している。 (Met. 8.533-546 / 『神話伝説集』174 / 『博物誌』10.74, 37.40 / 1.8.3(嘆いた女たちが鳥に)。語源記事 etymologies/meleagris も参照)
フェニックス
- プリニウスはローマの元老院議員マニリウスの説明を引く。寿命は540年。年老いるとカシアと乳香の小枝で巣を作って死に、その骨と髄から小さな虫がわき、やがて鳥になる。新しい鳥は巣を丸ごとパンカイア近くの太陽の町に運び、祭壇に置く。 (10.2(ボストック訳の章番号))
- プリニウス自身は実在を疑い、作り話ではないかと書く。クラウディウス帝の監察官在任中(ローマ建国800年)にフェニックスがローマに運ばれ、民会広場で公開されたが、偽物だと誰もが考えていた、とも記す。 (10.2(ボストック訳の章番号))