ギリシャ神話が語源の言葉

いて座

片腕を上げる若いケンタウロスの青銅像。
片腕を上げる若いケンタウロスの青銅像。作者不詳『若いケンタウロス』写真は2006年・Public domain

いて座(射手座)は、弓を引くケンタウロス(上半身が人、下半身が馬の種族)の姿で描かれる。ところがローマ時代のヒュギヌスの『天文譜』によれば、これをケンタウロスとする人が多い一方で、反対する人もいた。ケンタウロスで弓矢を使った者などいない、というのがその理由である。では、なぜ馬の脚とサテュロスのような尾を持っているのか。ある人々はこう説明する。この射手は、ムーサたちの乳母の息子で、ムーサたちの山に住み、狩りの名人でもあった者だった。森では誰よりも速く、芸事では誰よりも鋭い。ムーサたちの願いでゼウスが彼を星にするとき、その腕前をひとつの体に表そうとして、よく乗っていた馬の脚と、鋭さと速さのしるしである矢を付けた。ちなみに、賢いケンタウロスとして名高いケイロンは、同じ本では南の別の星座、ケンタウルス座のほうである。語源辞典も、ケンタウルス座は古代からいて座と取り違えられてきたと書いている。英語の Sagittarius はラテン語で「射手」、もとは「矢の」という意味で、古英語の終わりごろから使われている。

ローマ期天文譜近現代オンライン語源辞典近現代国立天文台 公式サイト

元になった神話

ケンタウロス族上半身が人間、下半身が馬の一族。ピンダロスでは、ヘラに欲情したイクシオンがヘラに似せた雲と交わって生まれた子孫とされる。ラピタイ族の王の婚礼で酒に酔って花嫁を奪おうとし、人間との戦いになった。ホメロスでは姿の説明はなく「獣」と呼ばれ、賢者ケイロンだけが「最も正しいケンタウロス」として別格に扱われる。