出典 · 近現代の翻案・映像化
Early Greek Myth: A Guide to Literary and Artistic Sources
Timothy Gantz · 1993年 · Early Greek Myth
各神話の出典を時代順に整理した標準的研究書。出典レイヤーの確認に使う。
この出典が語っていること
アルテミス
- 月の女神としてのアルテミスは後代の同一視で、ホメロス・ヘシオドスの月はセレネという別の神である。同一視をうかがわせる最も古い例はアイスキュロスの断片で、月を「レト(=アルテミスの母)の娘」と呼ぶ。兄ヘリオス=アポロンの同一視と対になって進んだ。 (『神統記』371-374 では月はセレネ。アイスキュロス断片170(Radt/Nauck/Sommerstein)が月を「レトの娘の星のごとき目」と呼ぶ件は Gantz 34-35頁の整理による。OCD『Selene』の項はアルテミスとの同一視を post-classical(古典期以後)とする)
メムノン
- アキレウスとの対決の前に、ゼウスが二人の魂を秤にかける場面(プシュコスタシア)が語られ、壺絵にも描かれた。『イリアス』にもゼウスが黄金の秤で二人の運命を量る場面があり(アカイア勢とトロイア勢、のちにアキレウスとヘクトル)、その型をメムノンとアキレウスに当てはめたものと考えられる。アイスキュロスには『プシュコスタシア(魂の秤量)』と題する失われた悲劇がある。 (『イリアス』8.69-74、22.209-213(黄金の秤で運命を量る場面)を本文で確認。メムノンとの秤量は『アイティオピス』系の伝承で、壺絵と断片の整理はガンツのメムノンの項による。アイスキュロスの同題悲劇はプルタルコスとポリュデウケス『オノマスティコン』4.130 の言及で知られるが、証言本文は未確認)
ポリュクセネ
- 『イリアス』にも『オデュッセイア』にもポリュクセネの名は一度も出てこない。プリアモスが息子たちを数える場面にも、トロイア落城後の女たちの運命にも現れない。ポリュクセネは叙事詩環以降の伝承で形を得た人物である。 (両叙事詩の全文にこの名が現れないことを確認。最初期の言及は『イリオスの陥落』のプロクロス要約(ギリシャ勢がアキレウスの墓でポリュクセネを犠牲に捧げる)。ホメロス本文での不在についての整理はガンツのポリュクセネの項)