出典 · 中世以降
フィロストラト
ボッカッチョ · 14世紀(1335年頃) · Il Filostrato
イタリア語の物語詩。ブノワの挿話を独立した恋愛物語に仕立て、ヒロインの名をクリセイダとした。チョーサーの直接の下敷き。
この出典が語っていること
パンダロス
- 中世のトロイア物語では、クリセイデの叔父(ボッカッチョでは従兄弟)として二人の逢瀬を取り持つ人物に変わる。ホメロスの弓兵とはほとんど別人である。 (ボッカッチョ『フィロストラト』ではパンダーロ、チョーサーではパンダルス)
- 英語の pander(男女の仲を取り持つ者、転じて情欲に迎合する)は、この名から生まれた。ただし語源になったのはホメロスの弓兵ではなく、中世のトロイア物語で逢瀬を取り持つ役に変えられたパンダルスのほうで、辞書はボッカッチョからチョーサーへ受け継がれた人物像を典拠に挙げる。名詞は1520年代、動詞は1600年頃から。語源の節も参照。 (etymonline「pander」の項で確認(中英語 Pandare は14世紀末、チョーサーがボッカッチョ『フィロストラト』から取ったもので「物語も名も中世の作り物」。名詞1520年代、動詞1600年頃)。OED / Merriam-Webster の pander の項も同じ系統)
トロイロス
- 中世に入ると全く別の物語になる。12世紀のブノワ・ド・サント=モール『トロイア物語』が、トロイロスと(ギリシャ側に渡る)ブリセイダの恋という挿話を創作し、これがボッカッチョ『フィロストラト』でクリセイダとの恋愛物語として独立する。 (ブノワはダレスとディクテュスを下敷きにしており、ホメロスには依っていない)